安全文化とセーフティ・カルチャ

2020年06月10日 16:38

講習会や社内教育で「安全文化」について講義をさせていただくと、「安全文化」そもそもの意味について必ずと言っていいほど質問を受けます。

安全文化が理解されにくい原因は、英語と日本語が示す言葉の意味の違いにあります。

原子力分野で「安全文化」という言葉が使われるようになったのはチェルノブイリ原発事故の後でした。

「セーフティ・カルチャ」を日本語に直訳した言葉ですが、当時は日本語と英語の微妙な意味の違いを考慮し、専門家は《「セーフティ・カルチャ」強いていえば「安全文化」でしょうか》という表現をしていました。

日本語の「安全」という言葉は、《全く危険が無いこと》ととらえがちですが、ISOが定義する「セーフティ」は《許容不可能なリスクがないこと(JIS Z 8051)》を意味しています。

また、「文化」はもともと中国の言葉で、《文をもって化す(上から教化する)》という意味ですが、「カルチャ」という言葉は《耕す(カルティベイト)》からきています。

このような経緯で、元原子力安全委員会委員長の松浦祥次郎氏は、《本来は「安全文化」でなく「安全開拓」とすべきで、自分自身で安全をどう実践するかにかかっている》と語っています(H25.6.25日刊工業新聞)。

つまり「安全文化」というのは、《固定した状態》のようなものではなく、《各個人の実践》に重点があるということです。

「安全文化」の内容を十分に理解するためには、このような経緯と言葉が示す意味について知っておく必要があるでしょう。

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