お釈迦様は初めて悟りを開いてから説法を始めるまでの間、菩提樹の下で思索にふけっていました。
悟りを開いたなら早く行って説法をすればお布施がもらえるのに…などと俗人は考えてしまいますが、その間何をしていたのかというと、一説では《思想の体系》を《実践の体系》に組みかえていたのだそうです。
今日的に言えば、理念、理想からハウツーへ、といったところでしょうか。
原子力の世界では「原子力安全」という理念、目的があり、これをどう実践に結び付けるかについて、北村正晴氏(東北大学名誉教授)は福島第一原子力発電所の事故への対応として、『理念を実践につなぐ』(日本原子力学会誌/2013年4月号)の中で具現化への道筋を考察しておられます。
個々の論点については、学会誌をご参照いただきたいのですが、多くの原子力関係者にとっての《福島事故を経て、どうすればいいのか》という問題意識と共通するものだと思います。
《理念を実践につなぐ》ことは、お釈迦様でも北村先生でも難しいことは確かなのですが、原子力安全に係わる政策を決める立場の方々から、現場で作業をする方々まで、実践を忘れることはできません。
具体的にどうすべきかということを考えるためには、純技術論以外のリーダーシップ、アカウンタビリティ、インテグリティへの理解が重要ですので、また別の機会に述べさせていただくことにします。