原子力に不可欠なインテグリティ【その2】

2020年06月29日 07:00

福島第一原子力発電所の各種事故調査報告書等において、事故原因に関する共通の指摘あるいは所見として《我が国の産官学界には、原子力導入に不可欠なインテグリティの認識が広義の意味において大きく欠如していたのではないか》ということがあります。

福島第一原子力発電所の事故の後、松浦祥次郎氏(元原子力安全委員長)が米国の原子力関係機関を訪問したところ、部屋の壁にも、卓上にもスタッフの胸のIDカードにも、INTEGRITYがあったそうです(以上、H25.8.1、電気新聞「安全性向上の指導的理念」より)。
 
P.F.ドラッカーは、その著書『マネジメント‐基本と原則-』の中で、マネジャーとして失格とすべき真摯さ(インテグリティ)の欠如を5項目定義した上で、「いかに知識があり、聡明であって上手に仕事をこなしても、真摯さに欠けていては組織を破壊する。」と言っています。

この「真摯さ」というのは【その1】に書いたような意味での「インテグリティ」なのです。
 
私は最近まで電力会社に奉職していた身なので大きなことは言えないのですが、世の中で組織の不祥事が後をたたない一因は、能力があってもインテグリティに欠ける者を高い地位につけているからではないかと思っています。

「上の好むところ、下これにならう(孟子)」というように、インテグリティの欠如が組織のカルチャを劣化させていくのです。

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