子供の頃、母から聞いたしりとり歌の一節に「すずめ、メジロ、ロシヤ、野蛮国、・・・」というのがありました。
「野蛮国」というのが子供の耳になじまないので、不思議な感じがした覚えがあります。
こんな歌を思い出したのは、ロシアのウクライナへの侵攻があり、戦争犯罪等の報道が続いているからです。
「野蛮」は「文明」の反対語として使われていたようなので、「野蛮国」というのは、文明化していない国というほどの意味なのでしょう。
また、この歌は「陸軍の、乃木さんが、凱旋す」という歌詞から始まるところをみると、日露戦争の後ではやったもののようです。
他国を「野蛮国」として見下すような、当時の国民の気分が表れているように思います。
日露戦争を契機に、日本は一等国(いやな言葉です)の仲間入りをして帝国主義的傾向を強めていき、やがては太平洋戦争につながることを考えると、この歌は日本にとっては不吉な予兆だったように思えてなりません。
今回の侵攻をめぐって、ロシアという国の性格についての様々な論評を目にします。
自分も以前、司馬遼太郎の「坂の上の雲」で、タタールに支配された歴史によって西欧とは違う性格が形成されたということを読んだ記憶があります。
本は断捨離で捨ててしまったので、硬い話はまた別の機会ということにして、小説を元にNHKが制作した「坂の上の雲」をビデオで見ることにしました。
日本海海戦の場面で、東郷平八郎役の渡哲也はカッコよかったですね。
Z旗が揚ります。
「皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」
東郷平八郎が戦艦三笠の艦橋に立ち、右手を上げ、左に下ろします。
戦史に名高い敵前大回頭によりロシア艦隊の進路を抑え、旗艦スワロフに砲火を集中する場面です。
しかし、「取舵一杯!」と指示する三笠の艦長が、たけし軍団のダンカンさんというのはずっこけそうになりましたね。
女性では、正岡子規の妹役の菅野美穂が良かったです。
明治時代の凛とした女性の感じが出ていてとても好感が持てました。
そういう話はともかくとして、日本海海戦の場面で、秋山真之(本木雅弘)が降伏した艦隊の接収に向かった時のこと。
艦内で戦死した兵士が積まれている前にひざまずき、手を合わせたのですが、私は反射的に、太平洋戦争では、逆に日本人がこのような状況に置かれたであろうことを想像して印象に残りました。
司馬遼太郎は生前「坂の上の雲」を映像化することを許さなかったそうですが、戦争をカッコよく描いてしまうことへの懸念があったことも一つの理由だったでしょうから、こういう場面には制作側の意図が込められているのだと感じました。
捕虜になったロシアの兵士たちは日本に送られたでしょうが、最近、ロシア関係の評論をネットで検索していて、偶然、地元にロシア人捕虜の足跡があることを知りました。
「日露戦争で捕虜になり、名古屋で死亡したロシア人兵士十五人の慰霊祭が二十六日、名古屋市千種区の平和公園内にある旧陸軍墓地で営まれた。」(2021.9.27中日新聞)
早速見学に行って撮った写真がこちらです。
キリル文字で名前を刻んだ墓碑が15基整然と並んでおり、横には上に十字架がついた慰霊碑が立っています。
当然ですが、帝政ロシアの時代ですから、仮にウクライナ人がいてもこの中に含まれることになります。
場所は、平和公園バス停前の万国戦没者墓地の一角、という良い場所にあります。
東区の出来町にあった陸軍墓地から移設されたものとのことで、名古屋に住んだこともあるのですが、こういうものがあることは全く知りませんでした。
(つづく)