数回前にシステミック・アプローチに関する記事を書いていましたが、その続きを書こうと思っていたところにロシアのウクライナへの侵攻が起きてしまい、その関係のお話を5回ばかり書かせていただきました。
今回は《生態系》というシステムについてです。
10年以上前ですが、「のだめカンタービレ」という漫画があったことをご存じでしょうか?
ピアニスト志望の「のだめ」こと野田恵と、指揮者志望の千秋先輩を軸に、クラシック音楽をめぐる様々な展開が面白く描かれていました。
テレビドラマでは、上野樹里さんがのだめ役で、いつも楽しく拝見しておりました。
特にのだめの「ギャボー」という台詞というか叫びが耳に残っています。
学園祭の仮装オーケストラの話で、のだめがマングースの着ぐるみ姿でラプソディー・イン・ブルーのピアニカを吹く場面がありました。
この写真のぬいぐるみはその場面にちなんだものだと思いますが、へびは干支の置物です。
実際のところ、マングースは結構どう猛な生き物のようです。
沖縄では観光用にハブとマングースが狭い檻の中で決闘する見世物があり、ほとんどマングースが勝つのだそうです。
最初はハブ退治の「期待の星」として沖縄、奄美大島に持ち込まれたのですが、期待通りとはいかなかったようです。
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読売新聞の記事2021/02/18
ハブ捕まえずに増えたマングース、「バスターズ」の捕獲活動で激減
環境省は15日、世界自然遺産登録を目指す奄美大島で、特定外来生物マングースの捕獲数が2018年4月に1匹捕獲されて以降、ゼロだったことを明らかにした。同省は、生息密度の低下が進んでいると分析し、「25年度末までの根絶を目指す」としている。
マングースは、1979年にハブを駆除する目的で沖縄から持ち込まれた。しかし、日中に活動するマングースは夜行性のハブをうまく捕獲できず、ふんから国の特別天然記念物アマミノクロウサギなどの体毛が見つかり、希少動物の脅威となっていることが分かった。
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「のだめカンタービレ」の漫画本を改めて確認したところ、ハブの絵まで描きこまれていて、ハブを駆除するためにマングースを持ち込んだ話にも触れられています。
漫画なのにとても良く調べて書かれていることに驚きました。(単行本第5巻)
しかし、マングースにとってみればこんなひどい話はありません。
ハブ退治を期待されて連れてこられ、見世物として檻の中でハブと無理やり戦わされて、勝つからいいようなものの、奄美大島の自然の中では夜行性のハブとは行動する時間が違うので出会いません。
そこで手近なアマミノクロウサギをとって食べていたところ、今度は駆除の対象にされてしまったという悲しいお話です。
これでは、私の人生(マングースだから「マン生」か?)は、一体何だったのかということになります。
このお話の結論は、マングースがかわいそうじゃないか・・・・ではありません。
生態系もシステムの一種ですから、JIS Q 9000におけるシステムの定義「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり。」からすると、予測できない相互作用、この場合はマングースがアマミノクロウサギを捕食するという望ましくない相互作用が起きてしまったということになります。
つまり、予測できない相互作用が起きることがあるので「システムに介入するのは難しい」ということなのでしょう。
この点について、小田理一郎氏はシステム論に関する書籍の解説中で「自然や社会のシステムはさまざまなものが複雑につながり合っているのに、その一部だけを取り出して考えると、期待した効果が生まれないばかりか、新たな問題を生み出すこともある」と述べています。
出典:「世界はシステムで動く」ドネラ・H/メドウズ、解説:小田理一郎
マングースにハブを退治させるのは有効ではないと指摘した専門家は当時もいたそうですから、《専門家の意見を無視した意思決定が問題を起こすことがある》というのが本当の教訓で、似たようなことはどの分野でもあり得ることではないでしょうか?